オープニングアクト

熱病のような夏も鎮まってきたように思う。
汗の質が、先週とは違う。
誰が終わらせたのか、それとも終わったふりをしてるのか。
ずっと27年それを知らずに生きている。


8/15

渋谷O-WESTにてライブ。

よしもと芸人ブロードキャストによる歌の祭典「ブロッキンジャパン2013」ということで、完全にお笑い好きの若者たちの前での演奏。
ソールドアウトのO-WESTにロックを知らない若者たちがパンパンに詰め込まれているにも関わらず、ものすごい盛り上がり。
ロックインジャパンより、奥の奥まで行き届かせることができた。

ロック音楽に興味を持たない人達が、ロック音楽に夢中になる瞬間。
それを見初めることができるのは、この仕事の醍醐味のひとつだ。

たった10分。
たった2曲。
でも、瞬間と永遠。



8/16

名古屋クアトロにてライブ。
写真は出演者一同。

この日は今までの音楽生活の中で、最もステージで喋りすぎた日。

10年前の話。
新宿LOFTにぼくはeastern youthを初めて観に行った。
共演は小谷美沙子、LOST IN TIME

16才の井の中のパンクスのぼくは学生服。
鋲ジャン、鋲ベルトにビビりながらもステージのほぼ最前列へ。
汗と唾を顔面に受けながら、まばたきもせず観たはじめてのパンクロック。
袖で泣きじゃくりながらLOST IN TIME海北くんがeastern youthを観ていた。
LOST IN TIMEもこの日、eastern youthと初タイバンだった。
16才の俺はその泣き顔を見て、「ちくしょう。」って思った。
「今に見てろ。」


それから10年。
名古屋クアトロでLOST IN TIMEeastern youthと共演するということは、一体俺にとってなにを意味することなのだろう。
同じくこの日、eastern youthと初タイバンのcinema staffのミシマくんもそわそわしていた。
LOST IN TIME海北くんもやっぱりそわそわしていた。
心をざわつかせる何かを、やっぱりあのバンドは持っている。

出番はcinema staffLOST IN TIMEeastern youth
そしてトリが我々THEラブ人間
この出順がどんないきさつで決まったかは知らない。
心臓の鳴る早さ、こみあげる吐き気と反比例して、心の底で静かに思った。
「チャンスだ。」って。
もし誰かが辞退した順番だとしても、俺は絶対に喜んで掴んで離したくなかった。

大振りのライブ。
一塁打も、センター前へのフライもない。
ホームランか空振りかどっちかのライブ。
肩が壊れるまで、振りかぶってストレート。
三振取るか、デッドボールか。

最後の最後。
クアトロのフロアに降りて歌った「砂男」。
太刀打ちできないほどのデカさの壁が目の前にあった。
それと対峙した時に、目を背けたくなった。
怖くて怖くて、いくら歌っても届かないような気がして、逃げ出したかった。

10年前のあの日。
機材搬出をする吉野さんに声をかけた。
「なんだこいつ。学生服じゃねえか。」と言いたげな目で睨みつけてくる彼に、「吉野さん。ロックってなんですか?」って聞いた。

16才の俺は、その時コピーバンドを三年間やっていた。
ピストルズやKISSやブルーハーツなんかを。
誰の歌をうたってもわからなかった。

「ロックってなんなの?なんでこんなに胸が熱くなるの?昨日までの景色がなんで違って見えるの?なんなの?ロックってなんなの?」

眼鏡の奥にギラリと光ったふたつの目。
いい大人が高校生を睨みつけて
「てめえで考えろ。」と唾を飛ばして、怒った。

あの日から、コピーバンドをやめて、歌を作るようになった。
誰も知らない自分のことを歌おうと思った。
そしたらロックってなんなのか、わかる気がした。

10年後、そのロックに殺されかけている俺がいた。
ものすごい強さで、鈍器で殴られているかのような痛み。
だが、今にも膝から崩れそうに震える俺を焚きつけるのも、またそのロックだった。
ロックは10年前の会話だった。

勝ち目のない相手と戦わなくてはいけない。
勝ち目のない相手に勝たなくちゃいけない。
背中を向けちゃならない。
目をそらしちゃならない。
諦めなかったから、ここまで来れたんだ。
誰に決められたわけでもなく、俺はてめえで考えて、ここまで来たんだから。

大振りフルスイング。
空振り三振。
ゲームセット。

でも同じマウンドに立った。
10年かかって、同じマウンドに立った。

「今に見てろ。」



8/17

一切の力、残っておらず。
愛知佐久島にて戦士の休息。

フェリーに乗ったり

海眺めたり

流木抱いたり

カモメにまみれたり

降りれなくて泣きそうになったり


8/18

まずは下北沢BASEMENT BARにてソロライブ。
荒川ケンタウロスと、ボヤケルズツーマンライブにゲスト出演。
この日の歌はすごく小さな領域で歌われていたように思う。
テレビの向こうも、海も、空も越えず、ただそこにうずくまるような歌。
時々、こんな歌をうたいたくなる。

【セットリスト】
1・コカコーラ・イン・マイ・サマー
2・カレーライス
3・エンケンさんのカレーライス
4・八月のサイン
5・夜明けがまた今日も来たふりをして(新曲)


そしてすぐに移動をして渋谷LUSHTHEラブ人間ライブ。
三年ぶりにBeat Happeningに出演した。

このイベント、vol1000までもう少し。
1000回イベントを続ける苦悩を俺には容易に想像できない。
しかも時代を切り取りながら。だ。

水口さんいつもお疲れ様です。
続けれる限り、続けてください。

俺たちのスタートの場所。
またここから始めるのだ。

写真は高野きゅん。
うみのてとは、念願のタイバン。
ステージ上での殺し合いはやはり楽しい。
久しぶりに血の味のする夜でした。


8/20

下北沢Cave beでソロライブ。
はじめて会うバンドたちの中、トリで炸裂。

この日は18日と違って、どこまでもどんものをも突き破るようなライブ。
言葉が自分の中に充満していたから、30分かけてゆっくり吐き出した。
アンコールが来なかった瞬間に、「もらった!」と思った。
時に、それ以上は必要ないほどに焼き付けることができる夜がある。
俺はそんな滅多に出会えない夜が好きだ。

【セットリスト】
1・ひとりにもどろう
2・カレーライス
3・なつみちゃん
4・エバーグリーンさん
5・大人と子供(真冬のテーマ)
6・バンドをやめた友達

共演のエツシホシノとくるくるぱー動物と

リハ後にロ字ック山田とホットケーキ。
磨り減りながらも、何故俺たちはものをつくるんだろう。

終演後には夢見てるあべとthe peggiesゆうほと日高屋
あべの髪の毛が外人の陰毛、またはビューテイフルライフの頃のキムタク。


ほかにも天野ジョージと二日連続いちゃついたりした。


今日はそんな天野ジョージ率いる撃鉄と、愛おしいモンスターバンドWiennersと仙台でスリーマンライブ。

みなさん、見に来てくださいね。

K.K


追伸
6月に行った仙台でのソロワンマンライブのライブレポートをSAIKORO菊池さんが書いてくれた。
その中の一曲「これはもう青春じゃないか」の映像もUPされた模様。
是非、読んだり見たりしてくださいね。

レポート→ http://oto-poto.com/report/108/
映像 → http://youtu.be/nF9LgsSJxVc



【今日の新曲】

オープニングアクト

クラッチノイズ混ざったSEで
張り詰めた糸 手繰り寄せてステージへ
愛する家族も友達も恋人も
この場所にあげてやることはできない

一度走ったら止まることは許されない
命綱を持ってはあがれない
今夜は荒れ模様 ぬかるんだ足元も
なぜかとても居心地がいいんだ

誰も知らない若者たちが
誰も知らない歌をうたった
そして誰もが!そして誰もが!

薄めた酒では酔っ払っちゃくれない
沈殿した夢は濁り鈍くひかる
居もしない神に祈る暇があれば
削った生活のアカを煎じて飲む

馬鹿にされた数だけ強くなれるなら
いくらだって罵ってくれてかまわない
2,3年の命の歌をつくれやしない
産まれた瞬間にキツく抱きしめたい

誰も知らない若者たちが
誰も知らない歌をうたった
そして誰もが!そして誰もが!

今日の舞台はどこだ?どこだ?
ハイエナのように
野良犬のように
今日の舞台はどこだ?どこだ?
デカイ口を叩いた分
期待してくれた分
最前列で拳をあげてくれた分

誰も知らない若者たちが
誰も知らない歌をうたった
そして誰もが!そして誰もが!

誰も知らない若者たちが
誰も知らない歌をうたった
そして誰もが!そして誰もが!