サマー・レッド

赤いコンバースのオールスター。
それはダブルのライダースや、リーバイス501,606と同じようにファッションにおけるロックンロールと青春の象徴だと、昔から決めつけている。
2000年前半に思春期とロックンロールの夜明けを迎えたぼくにとっての、最大の「格好つけ」。
27才の誕生日前に15年ぶりに買った。
こうやって格好つけることによって、俺はすでに失くしてしまった何かを取り戻そうとしてるのかもしれない。
(ただやはり昔から格好つかないのが、たまに傷だ。)

夏の赤。
ベイビー、サマー・レッド。


ひさしぶりに二連休。
車に乗って、大学時代の友人の結婚式を祝いに長野へ行く。
二年以上会っていなかったあいつやあいつやあいつらとの再会は、会っていなかった時間なんてものを二秒で吹き飛ばす。
輪廻する記憶は、薄れることを知らず濃くなっていったりするので面白い。

ぼくが忘れていってしまうものたちは、ぼくが忘れてしまいたいものなのかもしれない。
同時に忘れてしまえるものは、いま手元にない何かを補う「別の何か」を持っているからなのかもしれない。


愛はやはり、かじり合うことだ。
お互いのモラルやルールを「特別に許す」ことだ。
本当は、他の誰かなら許せない、食えもしないことを、君だけは特別に。

夏の晴れた日、門出には丁度いい。
大丈夫、大丈夫。
道は見えない、道しるべもない、確証もない。
それでも、大丈夫。
本気で思っている。


K.K


【今日の新曲】

「サマー・レッド」

ずっと言えなかったことが
朝七時の風に吹かれて
部屋の中をふわふわと飛んでいる
きみの好きなバンドの新しいレコード
すごい轟音を鳴らし、弾け、渡る
その飛沫の中、決断は行ったり来たりしてる
電車で眠りこけてるうちに知らない街に辿り着いたり
窓から飛び降り自殺しそうだったりしたくなかったり
ぼくもこのレコードもうすぐ好きになりそうだよ
未完成なふたりは涙を流している

泣きじゃくったきみの顔は
やっぱりすごく綺麗で
ぼくは鼻の頭をそっと触りたくなった
トイレットペーパーを幾重かに重ねて
全部、ちーんと出してしまおう
見え隠れしてるよ
全部ばれてるよ

大粒の涙ははじめて知った頃のきみから
想像もつかないような真珠貝のようさ
きみを好きになった日のこと
よく覚えてる
それははじめて自分を好きになれた日のことでもあったんだ

きみは描く
過去を描く
俺はきみを追いかけている
俺も逃げる
君に逃げる
過去のきみにずっと逃げてた
ずっと一緒にいたいんだ

幸せっていうものが
半分ずつ持ち寄りあうものだったら
きっとそれは幸せではなくて
短期バイトのようなものだろう
俺はいつも何センチか浮いていたい
この世界と折り合いをつけて何センチか浮いていたい
その空白の中に幸せを置いておこう
きみが見てなかったところに幸せを置いておこう

間取り図まで書いたいつかの未来のシーン
玄関を抜ければ台所
熱い熱い珈琲を淹れよう
名前はまだ俺にもきみにも無い
そしていつかの子供達にももちろん名前は無い
予想図は想像を越えたものであれば
あればあるだけいい
知らないほうがやっぱりいい
笑え笑え 苦い顔して笑って欲しい
窓開け放って欲しい

歌えるかな?
産まれたばかりの赤ん坊のように歌えるかな