8月2日

つい二年くらい前まで沼袋という街に住んでいた。
西武新宿線の各駅停車でしか止まらない、小さな街。
大きな事件なんて一つも起こらなそうに見える街。(きっとあるんだろうけどね。)
その頃、よく休日には高円寺まで歩いて暇をつぶしていた。
レコード屋古書店もあるし、ぼくにはぴったりだった。

七つ森という喫茶店で久々に珈琲とカレー。
高円寺の中で最も好きだった店。
丁寧に珈琲を淹れてもらうと、その分丁寧にたいらげたくなるものだ。

高円寺って街がやはり好きだな。と思う。
今でこそホームタウンは下北沢だけど、思春期のある時期はこの街に骨をうずめたくなったほど。
もしかしたら本当に好きな街には、住みたくないものなのかもね。


夜には渋谷クアトロに曽我部恵一BANDを観に行く。
ぼくにとっては特別なバンド。
サニーデイ・サービスでもなく、曽我部恵一ソロでもなく曽我部恵一BAND
THEラブ人間の基礎とあるべき姿はすべてこのバンドのパクリみたいなものから始まった。
初めに観たのは2006年頃のことかな。
あのバンドには中1の時に知ったSEX PISTOLSブルーハーツeastern youthをはるかに越えた何かがあった。


今でこそツーマンをやったり、企画に出てもらったりと音楽家として触れ合ってはいるけれど、この日はあの頃のように前売りチケットを買って、バンドTシャツを着てほぼ最前列で楽しんだ。

つま先から頭までしびれるようなロックンロール。
俺はこの快感を味わえるバンドを他に知らない。
聴くたびにぼくは、いつだってこの瞬間にしか物事は動いていないってことを知る。
過去は終わったことで、未来はまだここにないもの。
そこでは時計は価値を持たない。

過ぎていってしまったものが、ある。
今はもうここにないもの。
それはいつかの、愛。
俺が持ってるものとは違う、愛。
それはもうここにはないよ。
振り返っても、そこにはないよ。

愛はいつでもあなたの隣でいびきをかいている。
愛はいつでもあなたの隣で髪を乾かしてる。
愛はいつでもあなたの隣で二日酔いになっている。
愛は二人分の珈琲を淹れている。

そして、愛は五線譜の上で旅をしている。


K.K



【今日の新曲】

「8月2日」

「わたしあなたの彼女になった日を
いつか忘れるから覚えておいてよね
こんなに泣いたことも あれだけ悩んだことも
いつか忘れるから覚えておいてよね」

「うん、そうだね ぼくが覚えておくよ
鼻をかんだほうがいい
トイレットペーパーをくるくる丸めて
全部、出してしまえ
道はこっちだから迷子にはならないで」

最後に泣いたのはいつだったっけ?

今日はふたりの誕生日
また新しいふたりが産まれた日
抱きしめ合ったのもいつぶりだったっけ?
幸せにならなきゃね