眠りたい(永遠でもいい)

下北沢音楽祭にて演奏してきたのですが、ドラマや映画のようでした。

まずこのイベントは下北沢の街中いたるところで、音楽家が演奏をしていて、それを無料で観れるという、死ぬほどお得なものでして
ぼくは18:00からファーストキッチン前野外ステージにて演奏の予定でした。

ただぼくの前に演奏をしていたYDOのステージが始まってまもなく、雷が鳴り雨の気配がし始めました。
ステージ担当の方から、雨が降った瞬間に電気系統が使えなくなるので演奏開始時間を早められないか?と提案をいただき、雨が降り始めるまでを条件に演奏することにしました。

こんな感じに、のんびりとセッティングをし始め

20分はやめの17:40から演奏を開始したのですが、一曲目を始めるか始めないかのうちに土砂降り。
電気系統は一切使えなくなり、集まってくれていたたくさんのオーディエンスも雨宿り状態に。

でも、そんな物凄い雨に打たれながらも凝視するように最前列で観てくれていた人達もいて、たまらない気持ちになってしまい、気付けば

こんな感じで、三曲夢中に演奏しました。
雨でほとんど音も声も聴こえなかったかもしれないけれど、出来得る限り一番デカイ音で。

演奏終了したのが17:50。
ステージ自体に中止の判断が下り、ぼくはバックステージに戻りました。
まだ外は物凄い音を立てながら雨が降っていて、オーディエンスのざわめきも聴こえていました。
もう何年も観たことのないような、本格的などしゃぶりは一瞬にして街を水たまりにさせていきます。
ハリウッド映画のCG効果でも、その雨を作り出すことはできないでしょう。

ぼくは、その雨音を聴きながら、まだ歌いたくて、やりきれなくて、悔しくて、歯痒くて、泣いてしまいそうでした。

じきに雨はやみ、外に出ると、さっきの三倍はいるんじゃないかという量のオーディエンスが待っていました。
時刻は元々定まっていた、ぼくの演奏時間から5分ばかり過ぎた18:05。
つまりみんな状況を把握していない人達が集まって、演奏開始を待っているのです。

何人かには「中止になったんだよ」と伝えたけれど、YDOがステージ担当の方に掛け合ってくれたようで、ぼくは電気系統を使わない完全アンプラグドなら幾分か時間を使っていいと言っていただけました。
なによりも、YDOが、やりたいんならやれやと言ってくれたことが背中を押してくれました。

また雨で中止になるのだけは避けたかったので、テントの下にオーディエンスをぶっこみ、生音生声で三曲演奏しました。


演奏している間、さっきのわだかまりがほどけていくのを感じました。
期待してるオーディエンスの目も、さっき聴こえなかった歌や歌詞を聴こうとする耳も、雨上がりのあの蒸した匂いを感じ取ろうとする鼻の動きも、よーく見えました。
あ、あいつ、久しぶりだなあ、観にきてくれたんだなあ。とか
あいつにこの歌聴いてもらうのなんて何年ぶりだろう、とか。
まるでストップモーションのように、視界がクリアで、手に取れるようでした。

歌が世界を変える、とか、音楽の力は偉大だ、とか、そんな大層な話ではないけれど
この歌や音楽で、環境や天気や立ち位置や世界くらいにならケンカを売ることは出来るのだな。って。


終わったあとは、ほら虹。
あと、最高のスタッフとYDO。


【2013/7/7@下北沢音楽祭ファーストキッチン前野外ステージ】
(雨の中)
1.環七エレジー
2.結婚しよう
3.これはもう青春じゃないか

(雨上がり)
1.カレーライス
2.なつみちゃん
3.砂男


観てくれたあなた、ありがとう。
仙台に続いて、また忘れられない日が出来てしまいました。

少しずつ心の中がクリアになってきました。
答えだって、すぐ出せそうだよ。


K.K



【今日の新曲】

「眠りたい(永遠でもいい)」

この街に来た理由は
お金を一円でも稼ぐため
今夜は406号室
明日は802号室
海の色だけは忘れないように

簡単に慣れてしまうんだろう
意味も価値もないほうがいいけれど
一晩いくらと値段がついてる限りは

今夜はあの人と眠りたい
他の誰かじゃなくてあなたと眠りたい
なにも話さないでも
そっぽを向いてても
今夜はあの人と眠りたい

免許を取ろうとしてるのは
きみがいつも眠そうだから
いつかは知らない街へ
いつかは見せたい場所へ
でも面倒臭がりは僕も同じ

簡単に粉になってしまうだろう
意味も価値もないほうが好きだろう?
一晩いくらを払わなくても隣にいれるなら

今夜はなつみと眠りたい
他の誰かじゃなくてなつみと眠りたい
なにも話さないでも
そっぽ向いてても
今夜はなつみと眠りたい