JACO

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「美容室で歌う」

ひさしぶりに五人そろって、音楽雑誌の取材。
大好きなトロワシャンブルという喫茶店が取材場所だったもので、美味しい珈琲をいただく。

この喫茶店は去年頻繁に通っていた。
午前中から仕事の恋人を見送って、午後一からの自分の仕事までここで詩作をしながら珈琲を飲むのが日課だった。

半透明の午前と午後の境界線の中、ある日は雨が降っていたし、ある日は風が強かった。

その後、下北沢にて'12のアフターパーティーということで美容室Magicoへ。
普段はれっきとした美容室の姿が、パーティー会場に様変わりする様子にとても興奮した。
ゴザを敷き、お菓子や酒を並べ、もはや宅飲みのような風貌。

ぼくは弾き語りでの演奏をさせてもらい、タカユキカトーとタカハシヒョウリとradio DTM社長にも出演してもらった。


窓の外の溶けかけた汚れた雪が、きらりと光って、とても言葉じゃ言い表せないくらい美しかった。
時間は穏やかに流れ、音楽だけが鈍い光を放っていた。

【セットリスト】
1.八月のサイン
2.FUCK OUR DAYS
3.恋人たち
4白い部屋
5.環七エレジー
6.星影のワルツ


終演後はだいこんまんで呑んだくれる。
ひとりひとり帰って行き、最後には俺とボランティアスタッフの男の子パンクのふたりに。
言葉少なく、愛想の一つもふるまえないこいつみたいなやつが俺は好きだ。

そのまんま酔っ払った勢いで、下北沢屋根裏のスタジオで朝まで。


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「なにも背負わず演奏すること」

昨夜の酒の勢いも手伝って、下北沢のあるライブハウスの、あるバンドで一曲だけギターを弾く。
歌をうたわず、ギタリストとしてステージに立つのはバンドを始めて14年ではじめてだった。

気楽な心持ちで、楽しむためだけにステージに立ったのはいつ以来だろうか。
戦場ではないステージにはこんな景色が広がっているんだってことを、忘れていた。

いろんなことをやれるようになったし、覚えたけど、忘れてしまった気持ちも同じくらいある。
思い出させてくれて、どうもありがとう。


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メルセデスベンツ

金田家の車はローレルという車で、ぼくが4歳の頃から乗っていて今年で23年目。
エアバッグもカーナビもついていないローレルは、安全性も実用性もないので、ここ最近、父はずっと新しい車を買おうかと悩んでいた。
ぼくは車の免許も持っていないし、父の車に乗ることもほとんどないので、無責任に「買え買え」などと囃し立てていました。

で、この日メルセデスベンツを見に行ったのです。
真っ黒なボディがぎらりと光り、重厚なドアはこないだ降った雪みたい。
そして、頭にはあのエンブレム!

試乗してる間、「こりゃいいわ買え買えー」とまた囃し立てていたのですが、街をぐるりと一周して戻ってきた頃には、ぼくらのローレルを見る目が一変していたのです。

さっきまでオンボロだと思っていたローレルの姿には、妙な品を感じるし、小さなライトからは大粒の涙がこぼれているようにも見えます。
20年以上連れ添った車を手放すってことは、簡単なことじゃないわけです。
20年以上分の思い出がローレルにはたくさん詰まっています。

その日の晩は、頭を抱える父を横目に豚の生姜焼きを食いました。
(父は次の朝、ベンツを買うことを決める。安全第一。)


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「SONGS」

この日、我々のセカンドアルバム【SONGS】のリリースが発表されました。

前作から1年経たず、11ヶ月間のスパンを挟んでの二作目です。

2012年のはじめから、夏の終わりまでを歌った10曲。
どうか、聴いてください。
4/3に発売します。



K.K



【今日の新曲】

「残雪に学ぶ」

三日前に降って未だ溶け残った雪が
汚く固まって 太陽が照らしてる
お前のようにうまく生きれたらよかったが
そううまくはいかない
俺は最高でも俺だ

気づいたら そういつだって
ポケットに穴が開いてはいるが

「大丈夫、大丈夫。」と、きみが言ってくれるのなら
「大丈夫、大丈夫だな。」と、実感し続けるだけの日々

冷たさが増して ガチガチに足元を覆って
前にも後ろにも行けそうもない
誰かさんがつくった足跡を追って行こうか?
そううまくは選べない
俺は最高でも俺だ

気づいたら そういつだって
ポケットに穴が開いてはいるが

「そのまんま、そのまんま。」と、きみが言ってくれるのなら
「このまんま、このまんまだな。」と、実感し続けるだけの日々

「大丈夫、大丈夫。」と、きみが言ってくれるのなら
「大丈夫、大丈夫だな。」と、実感し続けるだけの日々