ブラン

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ならば帰れ会という集団がいる。
これはぼくが2008年に発足した新しいスタイルの不良グループ。
当時、21歳くらいだったぼくとその仲間たちは下北沢のオシャレなバーで居酒屋と同じテンションで呑み、知り合いがまったくいないクラヴイベントの空気を壊す破壊的ダンシングを巻き起こしていたのです。
この日はそいつらとの新年会を浅草でやりました。


21歳のぼくはそもそも音楽で飯を食っていないし、そもそもTHEラブ人間結成前の何も知らぬ大学生で、あの頃から比べたら考え方や生き方は信じらんないくらい変わった。
けど、信じているものだけはなんにも変わってないんだな。

それは夢を見ることだ。
夢を持ち続けている限りは、なんだってやれる。
たとえ夢や理想を馬鹿にされることがあったって、屁でもない。
それは、ぼくのことを「音楽家」として見ていないこいつらがいるから。

ここ何年も新しく知り合う人々は自分の音楽を介して知り合ってきた。
俺はそれを誇りに思う。
と、同時に個人としての金田康平は希薄になっていったのもまた事実だった。
この境界線は実は物凄く曖昧だ。

2009年の結成からほぼノンストップで音楽とだけ向き合ってきた。
その結果、ぼくは何人もの恋人を八つ裂きにしてきたし、ある人たちには恨まれるようなこともした。
それが必要だと、思い込んでいた。
必要だったわけではないのかも。
必要だと思い込みたかったのかもしれない。

去年の恋に似ているツアーが終わって、休暇で箱根へ行った時に、その思い込みが空に消えていくのを俺は確かに見た。

歌はもう自分のものになっていた。
自分の体の一部になっていた。
引き出しにおいてきたりしなくても、もう刺青のように刻まれていた。

楽家ではない自分を必要としてくれる誰かと出逢うことは、ぼくの歌をもっと自由に解き放ってくれたのだ。
うれしくてうれしくて、箱根の旅館で涙を流した。

楽家であるぼくと、人間としてのぼく。
この境界線は今となってはもう意味をなさない。
ぼくの中に歌はある。
けど、歌はぼくのすべてではないのです。



今日はタワーレコード新宿店で歌います。
もっともっともっと自由に、歌を解放できますように。


K.K



【今日の新曲】

「どんな顔してたんだろう?」

心の一番奥にある
まだ開けたことのないドア
耳を当てるとだれかのはしゃぐ声
クラッカーが弾けて乾杯の音がする

欲しいものなんてひとつもないはずさ
足りないことなんてひとつもないはずさ
白いスニーカーはもう汚れてしまった
折り目のついた季節に讃美歌が鳴った

ぼくはどんな顔してるんだろう
きっとひどい顔してるんだろう
泣いてるのか笑ってるのかもわからない
そんな顔をしてるんだろう
きっとそんな顔してるんだろう
ぼくはどんな顔してるんだろう

柔らかな肉が昼間をコケにしている
そうさ世界は茹で過ぎたパスタだ
油にまみれた愛欲のサドルを
めいいっぱい踏み込んで 風をぜんぶ飲み込んだ

その時どんな顔してたんだろう
きっとひどい顔してたんだろう
怒られたり許したり忙しそうな
そんな顔をしてたんだろう
きっとそんな顔してたんだろう
曖昧な心と曖昧な体

天気が崩れてしまう前にここに帰っておいで
カーステレオからファストコア

ぼくはどんな顔してるんだろう
きっとひどい顔してるんだろう
泣いてるのか笑ってるのかもわからない
そんな顔をしてるんだろう
きっとそんな顔してるんだろう
ぼくはどんな顔してるんだろう