鍵を開けてやる

先週から今日までのこと。
少し時間が経つとどんな大切なことも全部忘れそうになる。
絶対になくしたくないような気持ちも、時を前にすると相手にならない。
なくしたくないのに、なくしてしまう。

それでも今日も布団から出た時に、まだ覚えてるつい昨日のことではにかむことができる。
それはもしかしたらなくしてしまった大切な気持ちに、遠くない、似通った気持ちなのかもしれない。
それなら、どんな大切なことを忘れても大丈夫なのかもしれない。
だってまたその気持ちに似たような気持ちと出逢えるでしょう。


12/12
九州キャンペーン

ラジオ、TVの収録は15時からなのに朝の9時過ぎには熊本に着いてしまったので、とことん観光。

熊本ラーメン黒亭

画家志望の男と女が恋に落ち結婚し、画家の収入だけでは生活できなくなった為、この黒亭というラーメン屋を夫婦ではじめたらしい。
それが50年近く前、事故によって旦那を亡くし、それでも嫁はひとりでこのラーメン屋を今日この日まで切り盛りしている、らしい。
はじめて食う熊本ラーメンは、焦がしたニンニクの香りがした。
めちゃくちゃうまかったけど、しんみりしてしまった。
そんなラーメン屋の事前事情なんて知らなきゃ良かったよ。まったくもう。
ラーメンを持って来てくれたおばあさんが、その嫁さんだ。
ごちそうさま。
壁には年月の皺をたっぷりつけた、大判の油絵が俺たちを見下ろしてた。


熊本城行ったり

くまもんに逢いに行ったり

くまもんよりもくまもん隊の日野芳美ちゃんのがかわいかったり

変な看板見つけたり

絶対にくまもんに勝てないゆるキャラに涙したり

んでちゃんと仕事して

鹿児島に移動して黒豚しゃぶしゃぶ食いました

ん?初日から食ってばかりだな。
と思ったので、ホテルに着いたあと夜の鹿児島を散歩。
どの街に来ても、繁華街というか夜街があってキャバクラや風俗のキャッチで溢れかえっていた。
平日から活気がある通りだなあと思っていたら、24時を超えた瞬間にぱたりと店が閉まり、人々も家路についてしまった。
さっきまでのガヤガヤはどこへやら、ひとっこひとりいなくなってしまった。

真夜中の鹿児島の夜街に突っ立っていた。
しーんと静まり返ったこの通りをただ眺めていた。
今、東京は何時頃だろう?と考えた。
すぐ頭を振ってしゃんとした。ここは日本だ。
なんだかとても遠いところまで来てしまった気がする。
この街にぼくのことを知っている人なんてひとりもいないのだ。
はじめて立った鹿児島の街とその夜が迫ってきて、押しつぶされそうになる。

何時間そこにいたのだろうか。
もしかしたら2時間かもしれないし、5分程度の時間だったかもしれない。
物音がしてハッとした。
たちんぼがゲロを吐いていた。

違う街で、知らない街で、いつもと同じような、いつとと違うような夜。
何種類もの夜があるんだな。


12/13
九州キャンペーン

結局、あの後朝まで作業をしていて寝不足のままロビーへ。
珈琲とチョコレートと煙草で目を覚まし、FM鹿児島で生放送と収録。

パーソナリティの新坂 恵梨は同い年。
お互いの指輪の話をしたり、この人も相当な恋愛至上主義者だと思う。

堪能する間もなく鹿児島を後にし、福岡へ。
昨夜のこともあってか、なんだか後ろ髪を引かれる。
この街に潜む謎に似た感覚を解き明かしたいなあと思っていたら

桜島。謎の正体はたぶんこいつだ。
ぼくは太陽の塔をはじめて見た時に殺される気がした。
恐ろしくて、足が震えて、膝がガクガクした。
圧倒的な存在感と自己力に打ちのめされた。
桜島を見て、あの時と同じ気持ちになった。
しかもあいつ噴火するらしい。
しかも結構な頻度で噴火するらしい。


博多駅はすでにクリスマスイルミネーションでまみれていた。
いい感じに空っぽそうなカップルが、空っぽな愛のささやきをかましていて抱きしめたくなったよ。
きみたちが日本の少子化を止めるんだ。
行け!!行け!!


FM福岡ではいつも博多駅のサテライトスタジオで生放送に出演してるんだけど、この日は記録的な寒さにもかかわらずたくさんの人たちが来てくれました。
前、キットカットくれた女の子も来てくれた。
この日はまさかの柿ピーをくれた。

パーソナリティはハルさん。
爽やかなくせに、どスケベなので嫌味がない。
こうゆー暑苦しいやつは好きだ。


今回のキャンペーン最後の仕事はcross fmでトギーさんの番組。
トギーさんの番組ははじめて福岡に行った日からずっと出演させてもらってる。
この日、話したことは家族や成長の話なんだけど、なんだか教会で神父に懺悔しているように感じた。

俺は今までの過去を洗いざらい誰に対しても(もちろん君に対しても)話してきたけれど、トギーさん持つ受け止める皿の深さと厚さがあるだけで、こんなにも言葉は跳ね返ってくるんだな、と思った。

祈りのような歌をつくっている、ってことは、懺悔し告白することにも似ているのだ。
いつかあの人はぼくのことを許してくれるだろうか。
それとももっともっと憎み続けるだろうか。


鉄火丼と焼き鳥とビール。
浸され、煙をあげ、泡になる、福岡の夜を終え、東京に帰る。


12/14

下北沢のスタジオで作業。
長かった秘密裏の作業も、ついについについに95%の行程が終了!!
あと少しで終わる。
しかもこの日決まったのだが、この作業の最終日はクリスマスイヴ!!
ロマンチックなものをつくるのには、ロマンチックな日が最適ってことですね。


12/15

昼から下北沢で会議。
間もなく近づいてきた我々のイベントも大詰めです。

そして、その後eastern youthワンマン@O-EAST
THEラブ人間初期からのスタッフcomaといざ渋谷へ。

ごちゃっとした頭の中、少しだけすっきりした。
結局、いくら熱くなってがむしゃらで情けなくかっこわるくても、逆に冷静になにも感じていないツラして過ごしても、どうしようもないのだ。
俺はポンコツの欠陥品。
ギギギっと油の切れた機関車ロボットなのだ。
どうせ一歩目も二歩目もコケる。
何度も何度も転げ回るだろう。
でも、やるしかねえ。いくしかねえのだ。
頭悩ましてぐるぐる考えてる暇あったら、即行動。
がっぷり四つでやるしかねえ!

レモンサワーと焼き鳥でベロンベロンで帰る。


12/16

スタジオ。
2009年から2010年の一年間という、まさにTHEラブ人間最初期の楽曲の一夜限りの復活ライブを大晦日にやることになり、その記憶を呼び覚ます練習。

晦日の昼からはじまり元旦の朝まで7会場移動してのライブ企画。
題してTHEラブ人間移動式ワンマン【移民の夜/漂白の朝】。

CD音源になっている楽曲は当たり前として、未発表曲、前ドラマーしかプレイしなかった2009年最初期の曲を含む鬼のセットリストでのバッキバキの計3時間半。
正直、一日に七回ステージに立ったことはないのでどうなるかわかんねえ。
真っ白な灰になって二度と歌えなくなるかもしれない。
それでも最高のライブになることは約束します。


12/17

撃鉄のワンマンを観に代官山unitへ。
相変わらず彼らはたまらなく愛おしい馬鹿野郎だった。
自分たちもバンドマン連中に愛されてるなあと感じるし、自信もあるが撃鉄には敵わない。
彼らには年輪という、固い絆がある。


その後、深夜にはbay fm「モザイクナイト」に出演。
久しぶりのRONIさんは今日も饒舌。
目を見て話してくれる人とは馬が合うという、ぼくの自論があるのだがこの人はまさにその通りの人。

話さなくていいようなクソ下ネタばかりをしゃべってしまった。
オーノー!!
ちなみに聴いていた人はわかると思うが、あのブログはマジで面白いので要チェックだ。
ぼくはあまり誰かに知らせるつもりはない。
ぼくだけの宝物である。


12/18

笹塚で昼喫茶。
久しぶりに喫茶店でゆっくり珈琲を飲む。
駅前の小さな喫茶店に入ったのだが、大体の駅前の小さな喫茶店がそうであるように、少しぬるく酸味の強い珈琲。
それにハムトーストで500円というコストパフォーマンスの素晴らしさ。
無論、喫煙可能。居心地の良さはあなた次第。
つまり無限大。

たまにこういう喫茶店にいると時間が止まっているように感じる。
店の外の世界は本当に動いているのだろうか。
もしかしたらぼくが知らない間に、甲州街道は凍りついているのかもしれない。

その後、スタジオ。
前述したとおり、それは記憶を呼び覚ます旅。
一音一音の正義と正しさを思い出し、言葉の配列とそれが彷彿させる風景を反芻する。
そしてそれをあてた誰かのことを思い出す。
それはすでに、遠い昔に失われてしまった小さな農村や老朽化した裏路地の灰色のビルのようだ。
もう手元にはない心を呼び覚ます長い旅。

夢うつつののちには果てのない現実。
下北沢南口商店街のフラグはすべて我々が占拠いたしました。
まもなく「下北沢にて」当日です。


12/19

ニューシングル「アンカーソング」発売。

頼む。買ってくれ。
やっと作品が自分の現在に近づいてきたのです。

この日から三日間、東京中の店を廻ります。

お店で偶然遭遇して声をかけてくれたみなさん!!
どうもありがとう!!
とても嬉しかったし、震えた手で握手してくれたの忘れません。

でもね、まったく見知らぬあなたがぼくらの音楽を好きでいてくれることは、その何倍も何倍も震え上がるほど嬉しいことです。

メジャーデビューしていつの間にか四作目になりました。
デビューしてあっという間の一年と四ヶ月です。
いろんなこと覚えたし、変な知恵もついたかもしれないけれど、いつだって一昨目のつもりで作っています。
そしてその何倍も、この作品が最後でもいいと思って、演奏し録音しています。

どうか大切に聞いてやってください。


K.K


【今日の新曲】

「泣きっ面の自画像」

足をくじいた男が
自画像を眺めてる
つまずいて転んだ男が
自画像を眺めてる

開きっぱなしの瞳孔で
静けさの中にいる
何もかもを知っているようで
何も知らないままでいる

お前の「赤」は誰かの「青」だ
お前の「白」は誰かの「黒」だ

年輪だけが増え続けた
大木が泣いている
役に立たない皺だらけの
大木が泣いている

お前の「水」は誰かの「渇き」だ
お前の「後ろ」が誰かの「前」だってこと
わかりかけた瞬間に解き放たれる命

ポンコツの欠陥品よ
誇れ その傷を

戸惑う前に吐き出せ心
立ち止まる前に踏み出せ歌を
はじめは未熟で赤黒かった
ポンコツポンコツ
戸惑う前に吐き出せ心
立ち止まる前に踏み出せ歌を
夜通し泣いてわかっただろう?
ポンコツポンコツポンコツ