たおやかに、生きる

5/25
朝起きると、ダイワハウスの人たちが家に来ていた。
どうやら我が家はリフォームするようで、その打ち合わせとのこと。

ぼくの家はじいちゃんばあちゃんの代に建てられた家で、築年数がとても古い一軒家である。

特徴的なのは二階南西に広がる大きなベランダ。
ちいさな頃はビニールプールを張り、遊んだ。
飼っていたインコと日向ぼっこをした。
思春期には、長電話をし、また失恋をして泣いた。
煙草を吸い始めた頃は、親にばれないようにベランダで吸った。

その打ち合わせによると、このベランダを潰してリビングキッチンにするようだ。

このベランダが失くなることに対して、ぼくは懐古主義ではないので、特に感慨深さを感じはしない。

でも。でも。
時間の長さは偉大である。
「古いものが良い。」ではなく、そこで過ごした時間の「長さ」。それは時折、「色、香り、景色」を鮮やかに眼前に突きつけてくる。

取り壊された時、きっとぼくはさみしいと、感じるんだろうな。
いまは、まだ、わからない。


夕方、半蔵門でラジオ収録。
ツネ、えみと歌う。
たのしかった。
ひさしぶりに、ツネをいじくりまわした。

半蔵門でのラジオは、今回の収録で最終回。
この番組にはデビュー前からお世話になっていて、冠を頂くのも三回目だった。

このチームとは、すでにお互いの押し引きを理解し合っているから、やりやすい。
我々の望むべき姿に、いつも期待してくれる。
また次、レコードをリリースする時には史上初の四回目をやりたい。

その後、渋谷で野暮用を済ませてから映画。
見たのは、アキ・カウリスマキ監督久しぶりの新作【ル・アーヴルの靴みがき】。

実に平熱、平板である。
カウリスマキ映画はやっぱり映画然としていないから、好きだ。
そこにたおやかに流れる「事件」は我々の睡眠、呼吸、歩行だ。
そして、睡眠、呼吸、歩行の中には熱い血が確かに流れている。

体は冷たく心臓は燃えている。

その後、つけ麺を食って珈琲を飲んで帰る。
たくさんたくさん話した。
好きな女の子とふたりで話すことは、幾つになっても楽しい。

K.K


=今日の新曲=

【チューリップ】

こうやって布団にくるまって
まくらに顔をうずめて
漠然と漠然と幸せになりたいと思った

布団がきみの腕で
まくらがきみの髪の毛で
漠然と漠然とそうであったらいいなあと思った

チューリップの絵文字が似合うあのコは
長野からでてきて
東京で二日酔って
花のように咲いたり、枯れたり

「幸せ」ってきみは言うけど
じゃあなんでどこかさびしそうなの?